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書籍

チーム

「チーム」は、箱根駅伝の小説である。正月のテレビを見て、久しぶりに読み返した。一気に読んだ。ストーリーがわかっているのに、改めてまた感動したから驚く。ご存知だろうが、箱根駅伝に出場できる大学は、前回10位までと、予選会10位までの合計20校だけである。そのほかに、出場を逃した大学のなかから、予選会で好タイムを出した選手が選ばれる「学連選抜」チームがある。この物語は、その学連選抜チームの選手たちが主人公だ。

「実走着差」理論

吉富隆安は戦友である。「富さん」「梶さん」と呼び合う仲でもある。 一時期、共に競馬を戦った。彼の職業は、大井競馬場での公認予想屋。いわゆる「場立ち」という、あらかじめ割り振られた場所に立って、自分が予想するレースの演説をする予想屋のこと。吉富さんのそれは、まさしく「演説」である。日本経済新聞の競馬実況アナ日記から抜粋してみよう(2019年8月17日)。

俺の人生どっかおかしい

「萩原です」いきなりの電話だった。誰だかわからず、返事に窮していると、電話の相手が言った。「先ほど、打ち合わせをした萩原健一です」事務所に帰ってきたばかりで、まさか、萩原健一さんから電話をもらうとは思いもよらなかった。「どうされましたか?」彼がなぜ電話をしてきたのか、見当がつかない。

「会社を休みましょう」殺人事件

作者は、推理作家の吉村達也。初出は1993年9月だから、もう26年も前の小説である。懐かしさよりも、この小説の成り立ちを思い出しているところだ。文庫本のあとがきから引用しよう。“アマチュア時代の原稿ストックの中から、おっ、と思うものが出てきました。ペンネーム……森川晶。タイトル……『プロメテウスの休日』。じつはこれ、私ひとりの作品ではないのです。(中略)これは三人の合作である(中略)。その三人とは――当時の肩書でいいますと――ニッポン放送制作部のプロデューサーであった宮本幸一。企画会社ネットワークのプロデューサー梶原秀夫。そして、ニッポン放送から扶桑社という出版社に出向してまだ一年も経っていないころの私、吉村達也です・三人とも三十代前半の若さでした。”

なぎさホテル

作家・伊集院静が誕生するまで、7年間にわたり暮らしていた伝説の「逗子なぎさホテル」での日々がつづられている。大正15(1926)年に湘南唯一の洋式ホテルとして建てられ、平成元(1989)年に建物の老朽、時代の流れには勝てず、昭和の終焉とともに幕を閉じた。彼はこのホテルで、1978年から1984年まで7年余りを過ごした。

16号線ワゴントレイル

「16号線ワゴントレイル」は、自動車雑誌「NAVI」に1994年8月号から1995年8月号まで「ルート16でたまたまカマロ」と題して連載されたエッセイをまとめ加筆したものである。著者は矢作俊彦。車の同乗者はカメラマンの横木安良夫。単行本のサブタイトルに「あるいは靴を下げ東京湾を時計まわりに」とあるように、出版社としての売りは「横須賀から木更津まで国道16号線をめぐる自動車旅行記」だが、本書の面白さは単なる旅行記でないところにある。

フイルムノワール/黒色影片

これは、矢作俊彦の最新作である。最新作と言っても、奥付を見ると2014年11月25日とあるから、もう5年近く前になる。もっと小説を書いてほしいと思っている数少ない作家のひとりなのに、彼はなかなか筆をとろうしない。日活映画で描かれていたころの横浜を書いてほしい、いまの横浜も書いてほしい、と願うのは、ホテルニューグランドのバー「シーガーディアン」が姿を変えてしまったいま、かなわぬことなのであろう。

置き去りの街

この小説を読んだことがある人は、そんなに多くないと思う。カッパ・ノベルスの一冊で、奥付を見ると、1999年8月25日。平成で言うと11年。著者、本間香一郎のデビュー作である。略歴を見ると、1940年京都生まれ。京都大学農学部卒。彼はその後、2000年5月1日「捨てたはずの街」(カッパ・ノベルス)、2001年10月1日「弔い屋 」(ノン・ノベル) 、2002年5月1日「逝く街の片隅で」(カッパ・ノベルス)と、書き下ろし小説を発売していく。そして、この4冊で、作家としての人生を閉じてしまう。その後の消息はわからない。「置き去りの街」は、京都を舞台にしたハードボイルド小説である。

隠蔽捜査

一冊の本と出合って、その作家が今まで以上に気になりだすことがある。今野敏という作家の「隠蔽捜査(いんぺいそうさ)」という本がそうだ。手元にあるのは文庫本で、奥付には平成20(2008)年2月1日発行とある。それまでにも今野敏の小説は何冊も読んでいるが、ここ十年ちょっとのあいだで、この作家の既刊本を手当たり次第に読んだ。好きな作品もあれば、そうでないものもある。この「隠蔽捜査」シリーズ以外では、横浜みなとみらい署シリーズと任侠シリーズが特に好きだ。

跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ

最近、バスケットボールの話題がニュースで取り上げられている。ワイドショーでも連日、大騒ぎだ。たった一人の選手が、この原動力である。八村塁。1988年2月8日生まれ。父親がベナン人、母親が日本人。身長203㎝。宮城県の私立明成高校を経て、アメリカのゴンザカ大学に留学。運命の日がおとずれたのは2019年6月22日――八村塁は、NBAドラフトでワシントン・ウィザーズから一巡目9位指名を受けた。これがどれだけすごいことか。マスコミの報道を見れば、よくわかるだろう。