ザ・ロイヤルファミリー

ミステリー以外で、久しぶりに面白い小説を読んだ。競馬が好きだから、よけいにそう思ったのかもしれない。まず、出版元の新潮社にある内容説明を掲載。〝継承される血と野望。届かなかった夢のため――子は、親をこえられるのか? 成り上がった男が最後に求めたのは、馬主としての栄光。だが絶対王者が、望みを打ち砕く。誰もが言った。もう無理だ、と。しかし、夢は血とともに子へ継承される。馬主として、あの親の子として。誇りを力に変えるため。諦めることは、もう忘れた――。圧倒的なリアリティと驚異のリーダビリティ。誰もが待ち望んだエンタメ巨編、誕生。〟競馬好きにはまさしく、読みたくなる紹介だった。年明け早々に購入したものの、例によって積んどくだけで時が過ぎ、やっと読んだのが、緊急事態宣言の発布された日だ。

もうひとつの浅草キッド

タイトルに「もうひとつの」とあるのは、すでに「浅草キッド」という本があるからだ。その本を書いたのは、ビートたけし。1988(昭和63)年1月に発売された。それから28年後の2016(平成28)年に、本書が発売されている。著者はビートたけしの相方であったビートきよし。タイトルについて、著者本人はインタビューでこう言っている。「歌にもなってるけど、相方の『浅草キッド』という本があって、そっちは相方目線で見た浅草芸人の姿。こっちは“ビートきよしから見たツービート”を描いた作品だから『もうひとつの浅草キッド』にしたんだよ」どちらの本も本人は書いていない。たけしの本は構成・井上雅義、きよしのほうは構成・鈴木実、とある。

小林麻美 第二幕

懐かしい人が本を上梓した。タイトルを見たとき、本人の著書だと思ったが、今回はインタビューに答えただけで、著者はTOKYO FMのプロデューサーであり、作家の延江浩である。雑誌「AERA」に2回掲載されたものを加筆して書籍化したものだ。帯に「四半世紀の沈黙を破り、小林麻美が初めて語る――」とある。最初の文章(エピグラフというらしい)にこう書かれている。

伊豆の踊子

読んだことがないのに、読んだ気になっていた小説がいくつかある。そのひとつが、この「伊豆の踊子」だ。いまの時期に、なぜ読んでみようと思ったのか――。コメディアンである志村けんの死にショックを受けたからだ、と言ったら、あまりにも唐突だろうか。だが、衝撃的なニュースにふれ、同世代ということもあり、一日中ボーっとしていた。次の日になり手にした本が「伊豆の踊子」である。

感染列島 パンデミック・デイズ

「読んでから見るか、見てから読むか」ではないが、まずは映画「感染列島」を見た。2009年1月17日に公開された映画である。この映画のキャッチコピーは「神に裁かれるのは、人間か? ウィルスか?」だ。日本で新型ウイルスの感染が広がったときの世界を描いているが、この映画公開の4か月後に新型インフルエンザが世界的に流行したというタイムリーな映画だった。ただ、内容的には感染症対策がチープすぎて、いま見ると、パンデミックになっても仕方がないとしか思えない。これなら、1995年製作のアメリカ映画「アウトブレイク」のほうがずっといい。ダスティン・ホフマンが熱演している。

TEST MATCH

古い本である。初版の発行が1991年12月20日。やっと見つけた。どこにしまったのか、まるで覚えていなかったどころか、本のカバーを見ても、内容をまったく思い出せないほどである。その謎は、本を読んでみてわかった……。

ノーサイド・ゲーム

「読んでから見るか、見てから読むか」角川映画第2弾「人間の証明」で使われたキャッチコピーだ。実にうまい。映画と原作本のタイアップである。本を読んでいない人にしてみれば、何だか暗号のように感じられるコピーだが、CMで流れた西条八十の詩と絶妙にリンクしている。「母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね」このナレーションとキャッチコピーがまるで謎解きのようだった。ちなみに、作者は森村誠一、月刊誌「野生時代」で連載され、1976年に単行本として発売。翌77年、映画にあわせて文庫化された。映画の監督は佐藤純彌、主役は松田優作。

コヨーテの翼

2020年7月24日に開幕する東京オリンピック。その開会式で日本の首相の殺害を依頼されたスナイパー〝コヨーテ〟は、暗殺に向けて完璧な計画を練り上げていく。テロを防ぐべく、万全の警備体制の警視庁は、見えない敵を追う。その4か月間の攻防を描いた物語である。

サリエルの命題

新型コロナウイルス感染のニュースばかりが、新聞やテレビで報道されているので、1月末から立春にかけて、2冊の本を読んだ。その1冊が、この「サリエルの命題」である。実にタイムリーで、というか、先見性のある作家、楡周平ならではの小説だ。米国企業日本法人のコダック(写真業界の大手)在職中に、1996年に宝島社から「Cの福音」を上梓して、作家デビュー。この小説が面白かったので、ずっと読み続けている作家である。

二重らせん 欲望と喧騒のメディア

2020年の年が明けて、初めて買った本である。四六判ハードカバー、本文552ページの分厚い本だ。横になって読むのには適していない。こたつに入りながら、2日間で読了。作者の中川一徳は、14年前に「メディアの支配者」という本を上梓している。この本は、それの続編ともいうべき一冊。